
運転免許更新のハガキが届いた。
証明写真が必要らしい。
でも、写真を撮るためだけに着替えて外出するなんて、じゃまくさい。
今どきスマホもAIもある。
自宅で作ればいいじゃないか。
我ながら、実に合理的な判断である。
証明写真くらい、自分で作れる

いつも利用していた駅前スーパーは建て替え中。証明写真機もろとも姿を消していた。
妻は別の撮影場所を調べてくれた。
だが、私は「無用だよ」と妻に豪語した。
自宅で撮影して、写りまできれいに修整するつもりだ。
だがもちろん、やったことはない。
そこでGeminiに聞いてみた。
まずはパソコンのCanvaで作る方法を教えてもらう。
すると、L判のサイズ設定だの、写真の配置だの、細かな手順がずらり。
……文字数が多すぎる。読む気になれない。早くも目が終わりそうだ。
そこで私は、実に柔軟な判断を下した。
「前言撤回 iPhoneで完結できるやり方を教えて。」
こうして、パソコンで作る計画は終了した。
所要時間、数分。成果、ゼロ。
簡単にできるって、誰が言った?

Geminiによると、iPhoneなら無料アプリで証明写真が作れるらしい。
撮影も背景の変更もサイズ調整も、これひとつ。
まさにこれ!
さっそくアプリを使ってみた。
ところが、いきなり背景を白くする方法が分からない。
「背景色を白にしたいけど操作がわからない。」
Geminiに聞いて、どうにか先へ進む。
すると今度は、写真へのアクセス許可を求められてビビる!
「えっ……大丈夫?」
「アルバムの写真とか盗まれる?」
「怖い……」
さらに、PDFのバージョンが古すぎるという警告まで現れた。
「次は更新しろ?」
「ものごっつ怖い!」
写真を撮りたいだけなのに、えらく物騒な話になってきた。
それでも、なんとか写真の保存に成功。
あとは印刷するだけ。
写真はできた。今度は印刷できない
写真は完成した。
あとはセブンイレブンで印刷するだけみたい。
Geminiによると、LINEのネットプリントを使えば簡単らしい。
証明写真アプリ攻略だけではすまないことが判明。
そしてまた出た。「簡単」。
すでに私はアップアップです!
気をとりなおして公式アカウントを友だち追加。
さっそく、写真の送り方が分からない。
「写真の出し方が分からない。」
Geminiに聞いて進めると、次は利用規約への同意を求められた。
「同意する?」
大丈夫らしい。
……でも、あれっ?
「同意の仕方が分からない。」
同意する気は満々なのに、同意ボタンが押せない。
悪戦苦闘。
ようやく同意できたと思ったら、今度は用紙の選択で躓く。
「何を選択する?」
ここまで来ると、Geminiの完全看護状態だ。
そして最後の質問。
「プリントしたい写真のQRコードはどうやって入手するの?」
するとGeminiから、QRコードではなく予約番号を使うと教えられた。
……そうなの?
もう何も分からない。
そもそも私は、証明写真を一枚欲しかっただけなのだ。
結局、妻のお世話になりました
どうにか印刷の準備が整った。
いよいよセブンイレブンへ。
しかも、妻に付き添ってもらって……。
自宅で証明写真を作れると豪語した男が、最後は妻の付き添いでコンビニへ向かう。
事態はすでに敗戦処理の様相だが、妻のアシストで無事にプリントは成功した。

その後、運転免許の更新でも写真はちゃんと受理された。
よかった!
一時はどうなるかと思った。
そもそもなぜ私は証明写真を自作しようと思ってしまったのか。
外出するのが面倒だった。
それもある。
だが、実はもうひとつ理由があった。
撮影場所をわざわざ調べてくれた妻に、
「無用だよ」
と、ついカッコつけてしまった。
自宅で撮影して、写真の修整までできる。
そんな大風呂敷を広げてしまった。
妻にカッコいいところを見せたかった。
それが始まりだった。
……結果、Geminiの完全看護と妻の完全フォロー。
証明写真は自作できた。
しかし、恥の多い4時間半だった……。